行政処分の「処分性」——取消訴訟の対象となる行為
処分性とは
行政事件訴訟法3条2項は取消訴訟の対象を「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」と定める。この「処分性」の有無が取消訴訟を提起できるかを左右する。
「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
— 最大判昭和39年10月29日(民集18巻8号1809頁)
処分性の要件
判例が示す要件は大きく二つ。
- 公権力性 — 行政庁が優越的地位から一方的に行う行為
- 法的効果の直接性 — 国民の権利義務を直接形成・確定する
処分性が認められた主な例
| 行為 | 判例 |
|---|---|
| 食品衛生法上の営業許可取消 | 最判昭和44年12月4日 |
| 建築確認 | 最判昭和59年10月26日 |
| 労災就学援護費の不支給決定 | 最判平成15年9月4日 |
| 病院開設中止勧告 | 最判平成17年7月15日 |
病院開設中止勧告の判断
医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は……相当程度の確実さをもって病院を開設できなくなるという結果をもたらすものであるから、処分性を有する。
— 最判平成17年7月15日(民集59巻6号1661頁)
処分性が否定された例
- 行政指導(任意協力を求める行為)
- 通達(行政内部の規範。ただし墓地埋葬通達事件では例外あり)
- 行政計画(原則として処分性なし。土地区画整理事業計画は最大判平成20年で認容)
土地区画整理事業計画決定
土地区画整理事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって……抗告訴訟の対象となる処分に当たると解するのが相当である。
— 最大判平成20年9月10日(民集62巻8号2029頁)
実務上のポイント
- 処分性がない行為への不服は、公法上の当事者訴訟(行訴法4条)や国家賠償請求で争う
- 処分性拡大の傾向:近年の判例は国民の権利救済を重視して処分性を柔軟に解釈
条文
行政事件訴訟法 第3条第2項 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為……の取消しを求める訴訟をいう。
— e-Gov 法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000139)
出典
- 最大判昭和39年10月29日・民集18巻8号1809頁
- 最判平成17年7月15日・民集59巻6号1661頁
- 最大判平成20年9月10日・民集62巻8号2029頁
- 行政事件訴訟法3条2項(e-Gov 法令検索)